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インタビュー

2021.05.31インタビュー

中村教授とゼミ生・田村淳が考える。AI&ロボットの時代に、僕たちはどう過ごすのか。

CiP協議会の理事長であり、iUの学長をつとめる中村伊知哉さん。芸人であり、遺書動画サービス・ITAKOTOを展開する田村淳さん。一見すると接点のなさそうなこの2人は、じつはKMD(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科)の元教授と教え子。今も続く師匠と弟子のような関係をひもときながら、これから訪れる未来について考えます。

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■中村 伊知哉さん(左) ■田村 淳さん(右)

45歳にして大学院入学。培ったのは、ゼロからイチを生み出す「学び」の姿勢。

田村:
伊知哉さんは、僕がこの春に卒業したKMD(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科)でメディア論を教える教授だったんですよね。

中村:
田村さんが入学するときは、教授会も大騒ぎだったよ。「ちゃんと通えるのか?」って(笑)。

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田村:
当時はコロナ禍じゃなかったし、授業も対面できっちり月曜日から金曜日まで。芸人としての仕事の関係各所に無理を言って、時間を作りました。本当に忙しいときは、院の近くのビジネスホテルに1ヶ月泊まり込みすることも。そんな過酷な日々でしたけど、楽しい気持ちの方が大きかったです。

中村:
色々な学生が集まっているから刺激的だよね。美大卒だったり、法学部卒だったり、企業勤めを経てくる人だっている。数あるバックボーンの中に、たまたま芸能界にいた田村さんが入学してきた。学生のみんなも田村さんからいい刺激を受けたと思うよ。

田村:
入学して1週間は、周りからちょっと警戒されていたというか、浮いていたというか(笑)。それでも修了するころには友達もたくさんできました。授業を通して、課題解決に向けて一緒に動いていると、仲間意識が芽生えるんですよ。中には「アツシ」って呼び捨てで呼んでくれる人もいたり、友達が我が家に遊びに来たり。今でも交流は続いていますね。修了までは、本当に大変でしたけど……。

中村:
KMDの修士課程を修了するには、論文を書いて、これまでの世の中にないものをゼロから生み出さないといけないからね(笑)。そういう意味で、学生同士で交流を持って切磋琢磨することが大切。でもじつは、学生たちのアイディアは、我々教授陣にもいい刺激になっているのよ。

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田村:
僕は在学時からずっと「死者との対話」について研究していて。その結果、KMDの修了と同時に、遺書動画サービス・ITAKOTOをローンチしました。みんなが動画機材を当たり前に持っているからこそ、遺書の在り方も選択的でいいと思って。たしかに何かをゼロから作るのは大変です。だけど、世の中に対して「これが今必要だ!」っていう信念があれば、あとは完成に向けて動くのみ。その道筋を組んでいくために必要だったことが「学び」であり、学ぶための場所が大学院だったんです。

中村:
いい話じゃん。でもね、この先のAIとロボットの時代はその姿勢がめっちゃ大事。

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AIとロボットによるシンギュラリティ⁉︎ 超ヒマ社会がやってくる!

中村:
これまでは人間が機械を働かせてきた。だけどこれからは機械が人間の能力を超えていく時代。するとどうなるか、人間がやりたくない面倒なことは、全部機械がやってくれるようになっちゃうの。人生100年、僕たちみんな超ヒマ状態。そのときに残る、人間の娯楽の最たるものが「学び」なんだよね。たぶん、今このときが人類史上最大の転換期。

田村:
人間の仕事がなくなっちゃうなんてことは?

中村:
実はそうでもない。だってインターネットが動き出した25年前にも「人間の仕事がなくなる」って言われていた。だけどGAFAにスマホ、Suica、メルカリ、ソシャゲー、初音ミク、eスポーツのプロ……挙げたらキリがないくらい新しい産業が生まれている。ってことは、新しく生まれる仕事の方が絶対に多いと思うんだ。

田村:
この転換期に、コンテンツを生み出す側に回るか、変化に対応して楽しむ側に回るか、はたまた傍観者か。そんな未来に備えてCiPが動いていく、と。

中村:
その通り。超ヒマ社会に突入して、超ヒマなまま過ごすなんて嫌でしょ? だからCiPがポップカルチャーとテクノロジーで、コミュニティを作る。漫画やアニメ、ゲームでもなんでも、コンテンツとデジタルを結び付けて世の中を面白おかしくしていく。暇を潰すコンテンツは、AIやロボットより人間の方が得意だから。そういう場作りの拠点が、ここ東京ポートシティ竹芝なの。そしてコンテンツを生み出す人材を育てるのがiU(情報経営イノベーション専門職大学)。学生は全員インターンを経験して、全員が起業する。ほら、ITで人間がもっと楽しくなる、そんな未来が見えてきたんじゃない?

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田村:
いやもう、めちゃくちゃワクワクしてきましたよ。こうやって伊知哉さんとお話していると、なんでもできそうな気がしてくる(笑)。芸人という肩書きを一旦置いて、僕はこの先に何をなすべきか。見えてきた気がします。

中村:
お、ぜひお聞かせください。

田村:
普段はスポットが当たらない人を照らすメディアを作りたい。例えば官僚の人。あの人たちって超絶優秀なのに、注目されるのは不正が起こったときだけ。そういうのってなんか違うと思っていて。本当の官僚さんたちの仕事ぶりを知ってもらいたいんですよね。だけど、会食をしながら話す、となるとまた問題になる(笑)。だからもう、一緒にサウナに入るしかない。たった今、思いついたことですけど。

中村:
面白そうじゃん! 文字通り、裸の付き合いだ(笑)。ITがあるからこそ、そういうコミュニティの加速度も必然的に上がっていくよね。いいじゃん、一緒にやろうよ!

田村:
伊知哉さんがいれば百人力ですよ(笑)。でも、散々デジタルの話をしておきながら、締めの話題がサウナってアリですかね?

 

【クレジット】
photo : Yutaro Tagawa
text&interview :Kanta Hisajima

PROFILE

田村 淳

ATSUSHI TAMURA

1973年12月4日生まれ、山口県出身。 O型。 1993年4月、田村亮と共にお笑いコンビ・ロンドンブーツ1号2号を結成。 コンビとして活躍する一方、安定した司会ぶりが高い評価を得ており、個人でも多くのバラエティ番組に出演。
山口県立下関中央工業高校卒業。2018年に慶應義塾大学法学部通信教育課程に入学(同年中退)。2019年、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科修士課程に進学し、2021年修了。

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