2018.03.20
ぎゅぎゅっとてんこ盛り : 第5回 福田浩士さん
※1 HADOは、体を動かして技を発動させ、フィールドを自由に動き回り、味方と連携して楽しむ『テクノスポーツ』です。「超人スポーツ」認定競技でもあります。頭にヘッドマウントディスプレイ、腕にはアームセンサーを装着してプレイし、現実の空間に「エナジーボール」や「シールド」といったバーチャルな情報を表示したAR(拡張現実)の中でプレイします。
基本ルールは、3vs3の対人戦で1試合80秒の一本勝負で、チームスコアの高いチームが勝利となります。
---ARならではのコンテンツの挑戦---
ーー HADOは公式試合では3vs3でプレイしていますが、システム上では最大何人同時プレイができるのでしょうか。
福田 技術的にはプレイ人数を増やせるんですが、HADOは3vs3である競技として完成しているので、今は3vs3の6人を基本としています。今後、HADOとは違った種類のARのスポーツを作る過程で、6人以上で競技できるようなものを作る可能性はあり得ます。
ーー ARを使っているHADOですが、どのように観戦するのでしょうか?
福田 イベントでは基本的に、会場の大きいモニターに映し出して見る他に、YouTube等で配信もしています。来年以降、番組制作も考えています。
ーー 観戦をより面白くするには何をすべきだと考えていますか?
福田 今まで、プレイして面白いものを追求してきたんですが、見て面白いものはまだまだ色々工夫できると考えています。シンプルに分かりやすく伝えることがスポーツ中継の基本と考えているんですが、HADOはここが発展途上ですね。
例えば今のHADOには、対戦しているチームの名前、各チームの5人のメンバーの中でどの3人がプレイし、誰が活躍したのかなどの基本情報が画面上にないので、これらを表示するだけでも理解は深まると思います。
また、チームの戦略を見て分かりやすくするために、3次元空間の中でどこに球が飛び交っていて、どれくらいスレスレで避けたのか、シールドで防いだのかなどの情報の精度を上げ、分かりやすく表現することが大切だと考えています。そうすることで、スーパープレイが分かりやすくなって見て面白いコンテンツになるのではないでしょうか。
ーー HADO独特のゲームの紹介方法などはあるのでしょうか?
福田 実際にやっている例で言うと、フィールド上のプレイヤーごとに当たったかどうか、ポイントをとられたかの判定が文字で表示されます。当たったら「HIT」、4ポイント目を取られた人は「K.O.!」※2と言う具合で、どの人が失点したか、という状況が理解できるようになっています。既存スポーツと比べると新しいじゃないですか。この表現はARならではです。
既存スポーツを参考に実況と解説とコメンテーターをつけて放送していて、少しでもわかりやすく魅力的に感じられるようなコンテンツ作りに取り組んでいます。そこでARだからこそできる、画面上の情報の表現方法、演出方法をどんどん工夫して実践していきます。
※2 4ポイント目を取られると「K.O.!」と表示され、一定時間何もできなくなる。
ーー 放送に使うメディアとしてはどのようなものがありえそうですか?
福田 今はYouTubeを使って配信をしています。ゲーム実況に特化したTwitchや、AbemaTVや地上波もあるので、今後は色々なプラットフォームを試したいです。
正直なところ、プラットフォームで大きな差があるとは考えていません。違いがあるとしたら、やはり地上波のインパクトです。視聴者人口が多いので、その影響力はネットとは全く違いますね。
ーー パブリックビューイングなどは検討されているのでしょうか?
福田 現在は、HADOを楽しみに見ている人が大量にいるわけではないので、その数が10万人100万人と増えたら、スポーツバー等でやっていきたいです。
---年々大きくなる大会、広がるプレイヤー層---
ーー やはり、一度プレイしたほうが観戦が楽しめるのでしょうか?
福田 やったことがなくても、見ていて面白いコンテンツにはしたいです。ただ、プレイすることで見る面白さが増すというのは確かにあります。例えば、平昌オリンピックでスケートが盛り上がりましたが、実際にスケート靴を履いて氷の上に立ったことのある人とない人では、滑ったことのある人は競技の面白いところ、技の難しさといった経験・前提知識があるので、より面白く観戦できる。なので、HADOも一回だけでもいいので触ったことがある人を増やすことは重要です。
大会はコアプレイヤー向けのものなのですが、大会とは別に一般向けのイベントも定期的に開催しています。毎週必ず初心者向け体験会や、出張イベントとかもやっています。また、店舗も持っているのでそこに訪れてプレイする人達も増やしたいです。
ーー ワールドカップで優勝するプレイヤーたちはどんな人達なのでしょうか?
福田 単純に強いプレイヤーが勝つんですけれど、チーム揃ってどれだけ練習量を取れたかということがダイレクトに関わってきます。それぞれの練習メニューはチームによって違って、走り込みや筋トレしているチームもいます。後は、フォーメーションやスキルカスタマイズのベストパターンをそれぞれのチームで考え抜いたチームが強くなっています。
ーー 実際の筋トレがプレイに反映するんでしょうか?
福田 特に下半身の筋肉を使うので、走り込みは大事です。前に出る、避ける、しゃがむなど、かなりの動きが要求されます。
現在のHADOのプレイヤーはゲーム好きとスポーツ好きが半々混ざり合っていますが、今後はシステムの精度が上がり、選手のレベルも上がっていくと必ず肉体的なトレーニングも必要になってくると感じています。
ーー ワールドカップの開催規模は国内外と幅広いですが、どれくらいの参加人数が見込まれますか?
福田 4月21日にやるスプリングカップ(日本開催のみ)の枠数は8枠なんですが、その枠を予選大会で奪い合います。
今後プレイヤーが増えたら大会数を増やしたいです。その場合、大会のランク分けが必要になりますが、始めたばかりの人も楽しめるような状況も作りたいので、ワールドカップ、ジャパンカップ、東京カップなど地域別だけでなく、ビギナーズカップやJ1、J2のようにレベル別など、色々な分け方も考えています。今年も去年と比べると大会数は増えていますし、来年はさらに増やします。毎週必ず何箇所かで同時に行われているというようなイメージで続けたいです。
ーー 大小の大会を開くことで始めたばかりの人でも優勝できるようになるのですね。
福田 そうですね。その可能性は十分にあります。
ちなみに、現在のトッププレイヤーには毎日プレイしている僕ですら全然勝てません。ですが、HADOはまだ始まったばかりのスポーツ。今からでも1ヶ月間半本気で練習すればトッププレーヤーになれると思います。
ーー 海外ではe-Sportsなどが流行っていますが、日本人と海外の人とでプレイした時の相違点はありますか?
福田 必ずしもe-Sportsプレイヤーがメインターゲットではないので、相違点は特に無いと思います。HADOのプレイヤーの特徴は、アクティブに仲間と遊ぶアウトドア派の人たちです。そのような人たちが盛り上がっていることは全世界共通だと感じています。
ーー どこの国の人が上手いとかはあるのでしょうか?
福田 今のところ技量は練習量で決まっているので日本ですかね、日本人は練習に対する熱量がすごいです。日本人は一番本気度が高く結構練習しています。特にトップのプレイヤーたちは週に2、3度集まって練習しています。
ーー 今後は店舗に行かなくても、例えば家などで練習ができるようになったりするのでしょうか?
福田 将来的には考えています。来年以降のタイミングでは家庭内で練習できるようなアプリ等も作って行こうと考えています。
ーー その場合、スマートフォンを装着してプレイするイメージなのでしょうか?
福田 そうですね。もしくは装着しないイメージも考えているんですが、そこはまだ検討中です。
ーー 海外で流行っているテクノスポーツや、HADOのライバルになるようなスポーツはありますか?
福田 今はありません。VRスポーツは今後波が来るとは思うのですが、目立ったものはないと感じています。また、感覚としてVRスポーツはe-Sportsの延長線上にあって、観戦者にとってもあまり差がないので、体験として実際に体を動かすHADOとは異なるものになると考えています。
VRスポーツの中でも、実際に体を使って、その動きがアバターを通して仮想現実上で再現されるものがあれば状況も変わりますが、それが出てくるまでの間はテクノスポーツはHADO以外のプレイヤーがいない状況ではないですかね。
---テクノスポーツ五輪はサッカーを超えられる?!---
ーー 新しい競技の開発状況についてはいかがですか?
福田 年内に新しい競技を一つ出したいです。様々なタイプのものを試行錯誤しながら作っています。
ーー HADOシュートやHADOカートのように新しい器具を使う可能性もあるのでしょうか?
福田 乗り物などは使わずに、体ひとつで戦えるものを新しい競技としては考えています。
他にも色々なタイプのゲームが考えられて、例えば球技や、陣取り、アバターを使った対戦。それぞれ昔からよく楽しまれている王道ゲームのパターンを試していきたいです。具体例をあげるとすると球技なんかはまさにそうで、3次元のAR ホッケーをイメージするとわかりやすいです。空間上に球が飛び交っていて、ゴールにその玉を入れたら得点というなどのゲーム性は面白いと思います。
ーー 新競技をリリースする頻度はどれ程度で考えていますか?
福田 常に新競技の研究開発はしていきたいです。競技数をたくさん持ちたいわけではないのですが、その中のどれか一つがヒットすればいい。目標はサッカーを超えるような、すごい競技やスポーツ文化を作りたいです。どれが当たるのか、ということについては、様々な競技を出してみないと分からないです。
ーー テクノスポーツ五輪を開催したいということをお聞きしたのですが、そのイメージはどのようなものでしょうか?
福田 競技がたくさんあることにこだわりはないんです。1つでもいいので 世界中が夢中になれるリーグ戦をやりたいと考えており、サッカーや野球などの既存スポーツを参考に検討を進めています。
ーー 2020年のオリンピックの時にやりたいこととかはあるのですか?
福田 オリンピックに関しては、超人スポーツ協会に期待しています、非常に重要なパートナーですね。
オリンピックの開会式でHADOを使って欲しいとお願いしたら断られてしまったのですが、同時開催で渋谷の交差点をいきなりジャックしてHADOをやるとか、街中でいろんな国の人たちを巻き込んで大会をやるとか、そういった世界が驚き注目することをやってみたいです。
ーー 超人スポーツ協会と何がリンクしたのでしょうか?
福田 シンプルに、超人スポーツとは目指しているビジョンが同じだからです。HADOを含めたいくつかの競技をまとめて市場を作っていくというような役割であると僕は思っているのでそこを是非推進して頂きたい。超人スポーツは様々なネットワークを持っておられるので、一企業にできない協会だからできることを一緒にやっていきたいです。
---学校で剣道、武道、HADOも夢じゃない?!ARスポーツの可能性とは---
ーー meleapの目指すビジョンはどんなものなんでしょうか?
福田 僕の根本に、身体を拡張したいということがあって、それを実現する方法としてHADOをARで作りました。今後このARスポーツのような新しいテクノロジーを使ったスポーツ等の市場はどんどん拡大するでしょう。そうなると新しい文化や経済圏がそこにはできるので、一緒に作っていきましょうという所で超人スポーツとはビジョンが重なっています。
僕が「かめはめ波」を打ちたいと言うのは枝葉の話であって、身体拡張を実現すると、今までスポーツを楽しめなかった人たちもスポーツの分野に入ってくるし、観戦者の人口の増加にも繋がる。さらにARスポーツというテーマは非常に面白くて、今後5年10年後にAR プラットフォームが普及して、今のスマートフォンのように拡大する。となると、あらゆる人が端末にアクセスして、ARスポーツをすぐに楽しめる環境になってくる。
一方ARスポーツ観戦も、直感的で分かりやすい映像コンテンツが見られるようになる。まさにハリウッド映画のような憧れの世界を、ワクワクしながら見ることができて、迫力のあるものが作られるようになる。プレー、観戦のどちらの面から見ても、非常にポテンシャルがあると感じます。
ーー 様々な技術がある中でHADOをどのようにアップデートしていきたいと思いますか?
福田 僕らは今スマートフォンをベースにHADOを作っていますが、スマートフォンは定期的に進歩していくので、その都度システムは改善され、パフォーマンスも上がります。
ーー それを追いかけながら進んでいくようなイメージですか?
福田 そうですね。この間AppleからARKitがリリースされましたが、こうした技術の進化によってもちろん精度は上がるし、利用シーンやゲーム性も変わって、いつでもどこでも、街中や家、学校でHADOが楽しめるようになるのではないかと期待しています。
ーー 体育の中でHADOが行われるっていうことも近いかもしれないですね。
福田 スポーツを文化として根付かせるという意味では、学校教育に入れないと難しいと思うので、剣道、武道、HADOみたいなそのくらいの印象を持ったものにしなくてはならないですね。
ーー 学校教育にHADOを入れることのメリットはなんだと思いますか?
福田 いくつかのフェーズに分かれると思いますが、最初に取り組んでくれる学校さんにとっては「最先端の技術を使った」という点はキーワードになるのではないでしょうか。これから流れが来るARなどのテクノロジーを、スポーツ文化に落とし込んだ新しい取り組みを生徒に体験させる、ということにメリットを感じてくれる様な学校が対象です。例えば、コンピューター系とかCG系の学校は、おそらく最初にそういった取り組みをしてくれそうですよね。
もう少し進むと、新しいレクリエーションや、コミュニティづくりのような切り口もできますね。さらに次の段階になると、大会が開催されて無認可サークルが立ち上がるというような風潮ができて、それならちゃんとした形で、部活や授業に組み込みましょうというような流れができる可能性はあります。
ーー 教育のデジタル化が進むにつれ、なぜ体育だけがフィジカルなのかという疑問が生まれてくるかもしれませんし、ARスポーツが広まっていく中で教育だけでなく、運動能力のない老人でもできるHADOとしてゲートボール版みたいなものも考えられるかもしれませんね。
福田 広める過程で「これはゲームだから」、という認識を取り払うことが必要です。教育関連やスポーツ関連の人は、e-Sports系の人と一線を引いているように見えて、一般的には、あくまでゲームや遊びというような捉え方をされているように感じます。ただ今後の普及には、何処かのタイミングでそれを取り払うためのブランディングや、見せ方は必要です。
ーー 一般化させるために必要な条件はありますか?
福田 様々な要因がありますが、まずは憧れを作ることを意識しています。全人類が興味を持つような憧れのビジョンを作ることが大事で、それがトッププレイヤーのブランディングでもあるし、ワールドカップのブランディングでもあります。野球でいうプロ野球とか、甲子園とか、オリンピックもそうです。
ーー トッププレイヤーを育てるためにやっていることはありますか?
福田 もちろん大会もしていますし、プレイヤー達の露出も増やすことも同時に行っています。メディアに露出する際には、どんな人たちがいるのかということを知らせていく活動も大切にしています。特に、トッププレイヤーのブランディングは大切にしています。
ーー meleapは日本で初めてのテクノスポーツを扱った会社だと思いますが、それまで他の会社はなぜ参入できなかったのでしょうか?
福田 ビジネスの難易度が高いことではないでしょうか。 収益が出るまでに相当な時間とお金が必要です。一言で言うと無謀なチャレンジ、だからみんなやらないんじゃないかな。
ーー HADOに関わってきて欲しい人材やコラボレーションをマッチングしたい業界などはありますか?
福田 様々なポジションを募集しています。エンジニア、デザイナー、ディレクターなど、それぞれ全く足りていなくて採用はかなり力を入れてやっています。
今後事業を拡大する上でマッチングしたい業界としては、ゲーム業界やエンタメ業界、ロケーションベースの店舗ビジネスをやっている会社との協業を進めていきたいと考えています。
福田 浩士(ふくだ・ひろし)
【略歴】
株式会社リクルートを経て、2014年に株式会社meleapを設立。”かめはめ波”を撃ちたいという想いから「HADO(ハドー)」を作りだす。AR・ウェアラブル技術により憧れの”技”を放ち、戦いあう「HADO」は、 新しいスポーツの形として注目を集めている。2016年より、AR/VR初の大会「HADO WORLD CUP」も開催。ヒザがガクガク震えるほど世界を面白くする!をテーマに掲げ、活動を行う。