
2025.05.19イベント開催報告
AI×コンテンツ研究会「AI-dentity」 イベントレポート
2025年6月6日、ポートシティ竹芝8Fにて、第11回AI×コンテンツ研究会が開催されました。 慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD)特任助教の花光氏による最新AI動向の解説と、iU(情報経営イノベーション専門職大学)客員教授であり「スーパーAIクリエイター」として知られるSola氏によるAI映像制作の実演を通じて、「AIを活用したコンテンツ制作の現在と未来」について議論しました。
ハイライト①:AIエージェント時代の到来と「バイブコーディング」
花光氏は、2025年は「AIエージェントの夜明け」であるとし、自律的に作業をこなすAIの台頭について解説しました。 具体的にはGitHub Copilot、Devin、Cline、Cursorといったエージェント型ツールが挙げられ、これらがエンジニアの作業を単に補佐するだけでなく、背後で自律的に並行作業を行う環境が整いつつあることを紹介。
特に、人間の曖昧な指示(バイブス)からコードや成果物を生成する「バイブコーディング」という新しい開発手法に言及。今後はエンジニアリング領域だけでなく、デザインやライティングなどフロントエンドの領域でも、AIエージェントを複数「ファンネル」のように操るスタイルが定着していくだろうと予測しました。
ハイライト②:デジタル民主主義とブロードリスニング
AIエージェントの社会実装例として、花光氏はオードリー・タン氏が提唱する「ブロードリスニング(広聴)」と、安野貴博氏が東京都知事選で実践した「井戸端システム」を紹介しました。 このシステムはGitHubを基盤とした政策管理プラットフォームで、市民と政策文書の間にChatGPTが介在します。AIが硬い政策文を市民に分かりやすく噛み砕いて解説し、逆に市民の意見を「プルリクエスト(修正提案)」として政策案に反映させる仕組みです。 1,900件以上のプルリクエストが集まったこの事例は、AIとGitHubのようなバージョン管理インフラを組み合わせることで、政治だけでなく組織マネジメントやコンテンツ制作においても、多数の意見を集約し共創する新しい形を示唆しています。
ハイライト③:AI映像制作の舞台裏と「偶発性」の価値
Sola氏は、AIを活用して制作した「耳鼻咽喉科の歌」「ベニクラゲの歌」「ゴマ塩の歌」の3作品を披露しました。 特に「耳鼻咽喉科の歌」の制作過程については、以下のツールを駆使した具体的なワークフローが明かされました。
- 映像生成: Midjourney(Image to Video等で使用)
- 音楽生成: Suno
- 編集・加工: Adobe After Effects、Photoshop
Sola氏は「アイデアの段階でクリエイティブの99%が決まる」としつつも、Midjourney特有の「アーティスト補正(意図しない芸術的なズレ)」などの偶発性を好んで利用していると語りました。 一方で、AI特有のハルシネーション(破綻)を目立たなくさせるプロのテクニックも披露。「エッジ処理で解像度の低さを誤魔化す」「スーツ姿の人物を選ぶ(服のシワの違和感を減らすため)」など、微細な調整をPhotoshop等で行っています。
また、楽曲生成(Suno)においては約400回もの生成・試行錯誤を行い、納得のいくイントロを選定したという執念のエピソードも紹介されました。 AI関連サービスへの課金(ChatGPTのProプランを含むハイエンドな環境)は月額約4万円ほどですが、従来であれば数千万円規模の予算が必要だった映像制作が個人で実現できる時代の到来を強調しました。
ディスカッション:新しい芸術の文脈
ディスカッションでは、花光氏が「バイブスで作られたものをどう受け取るか」という新しい芸術鑑賞の文脈を提起しました。 かつて初音ミクがボーカロイド文化を形成したように、生成AIによる作品も「裏側にある膨大な試行錯誤(400回の生成など)」や「文脈」を含めて評価される時代が来るのではないかという見解が示されました。 Sola氏の「AIのおかげで誰でも表現の下剋上ができる」という言葉に象徴されるように、AIは表現の民主化を加速させ、より多くの人が自分の世界観を形にできるワクワクする未来を共有するイベントとなりました。

