2024.04.06イベント開催報告
【レポート】AI×コンテンツ研究会キックオフイベント「コンテンツビジネスにおけるAI利活用の現在」
CiP協議会ではAIの登場によって大きく変わりつつあるコンテンツの制作、流通、受容についての変化を共有し、日本から新たな利活用の事例を作り世界に打って出る機会を探るプロジェクト「AI×コンテンツ研究会」をスタートし、3/18にキックオフイベント「コンテンツビジネスにおけるAI利活用の現在」を実施しました。
■登壇者 *敬称略
・金井文幸氏(日本音楽制作者連盟 専務理事)
・陸川和男氏(キャラクターブランド・ライセンス協会 専務理事)
・川口洋司氏(日本オンラインゲーム協会 事務局長)
・内山隆氏(青山学院大学総合文化政策学部総合文化政策学科 教授)
・花光宣尚氏(慶應義塾大学院メディアデザイン研究科 特任助教)
・湯本博信氏(総務省大臣官房総括審議官(情報通信担当))
モデレーター:
菊池尚人(デジタル政策財団 理事)
■レポート
花光氏の基調講演を皮切りに川口氏、陸川氏、内山氏、湯本氏、金井氏がそれぞれの視点からコンテンツビジネスにおけるAI利活用についてのプレゼンテーションを行いました。
【基調講演:花光氏】
以下の通り最新の生成AIの動向の紹介、および会場参加者が自身のスマホを用いた画像生成AI体験のワークショップが行われました。
●話題の生成AIの紹介
・人間の平均IQと同レベルと言われる「Claud3」
・資料を調べるのに有用な「Perplecty」
●South by Southwestにおける技術動向
John Maeda、Amy Webb、Peter Dengのセッションを紹介しつつ、大きな方向性として、
A:「APIを利用したり提案されたアルゴリズムを転用」し「独自のサービスやデバイスを提供」するもの。
B:OpenAIやMetaのように「アルゴリズム自体を強化」して「業界を変えていく」もの。
に分かれている旨が語られた。
●進化するAIアプローチの紹介
・音声のみでタスクを実行するAIデバイス「rabbit r1」
・iOSの日記アプリ「Journal」でのAIアシスタンス「ジャーナル記録の提案」
・チャット形式のAI対話アプリ「話聞くよおじさん」
・友達のように対話する音声会話型AIアプリ「Cotomo」
●ワークショップ
会場参加者が自身のスマホの写真を画像生成AI「become image」にアップロードし、ムンクの「叫び」風に加工されることを確認した。
その上で画像生成AIの最新動向として、
・CGの物理計算の進化
(昨年5月に生成AIモデルを使って8秒のアニメーションを作成するのに2-3時間かかったが、現在は1秒間に100-120枚の画像を生成する)
・大雑把に描いた絵をリアルタイムにする精緻化するリアルタイム生成AI「Akuma.ai」)
が紹介された。
プレゼンテーションを通じて、アーリーアダプターだけでなく、一般の人たちを取り込んで「自然に」生成AIと出会えるような経験としてポップカルチャーを産み出した日本のコンテンツ産業での利活用への期待が語られた。
【川口氏】
スマホゲームの開発における「生産性向上」「コスト削減」「業務効率化」のためにAIが活用されており、全部AIで作ったミステリーゲーム「RedRam」も出てきた。
これからはAIとゲームとIPが一体化した形に進んでいくと思っている。
【陸川氏】
キャラクターブランドライセンス協会としてはコンテンツ産業でのAI活用について期待と課題がある。
期待としてはAI活用により、慢性的な人材不足のアシスト、課題といてはAI生成物が著作物として認められるかが挙げられる。
【内山氏】
メディアコンテンツ領域におけるAI利活用については、例えば自動運転でのAIとは異なり、AIが暴走することによって人の生命や財産に直接危険を与えるものではないと思うので、もっと試行錯誤できてもいいと思っている。
国ごとの判断も異なり、AI生成物を著作物として認めるか認めないかについては、判例を含めてまだまだ試してみないと答えが出ないというところもある。
その意味で、今日の基調講演の「まずは手を動かそう」ということには賛成する。
【湯本氏】
総務省では現在AIガイドラインの策定を進めているが、どうしてもリスクをどうするかに目が行ってしまうところがある。一方で「利活用を進める」ことは大事で、こうしたところの議論が活性化し、日本のコンテンツ業界の浮上につながればと期待している。
【金井氏】
音楽の世界ではYoutubeがAIを音楽に活用するための基本的な考え方として「AI Music Principles」制定と、アーティストと生成AIの取り組みを協働する「Youttube Music AIインキュベータ」としてプログラムを作った。
新しいデジタル技術やツールが出てくると、だいたい最初に試験的に使われるのは音楽コンテンツ領域。
音制連としてはAI生成物の著作物としての権利のあり方とともに権利処理を業界としてどこまでやっていけるのかという点も課題。