【レポート】ちょもろーウィークセッションズ Day 1 – e スポーツと未来の教育を探るセッション
2024年10月7日、東京ポートシティ竹芝で開催された「ちょもろーウィークセッションズ Day 1 ~ e スポーツとちょっと先のおもしろい教育~」は、教育と e スポーツの融合に関する革新的な議論が行われました。教育関係者、ゲーム業界のリーダー、そして経営者たちが一堂に会し、e スポーツが未来の教室や教育にどのような影響を与えるかを探求しました。本イベントでは、競技の枠を超えて、e スポーツの教育現場での新しい可能性が紹介されました。
イベント概要
今回のセッションは、e スポーツが未来の教育においてどのような役割を果たせるかを議論する場として開催されました。e スポーツが持つチームビルディングや協調性、リーダーシップ育成といった教育的効果に注目し、教育関係者が新たなツールとしての活用法を探ることが目的です。e スポーツを通じて、学力向上や自己管理能力の向上、グローバルコミュニケーション力の強化など、従来の教育アプローチでは得られなかった新たな学びが生まれることが期待されています。
セッション1:NASEF JAPAN坪山義明氏「 e スポーツの教育的価値」
- 坪山 義明 – NASEF JAPAN eスポーツ・スカラスティック・ディレクター / NASEF US コミュニティーリーダー
NASEF JAPANのディレクターである坪山義明氏による講演が最初に行われ、e スポーツと教育の結びつきが解説されました。NASEF JAPANは、2020年に設立された教育に e スポーツを取り入れる組織であり、ゲームを通じて学力や人格形成に貢献するという新しい教育モデルを提案しています。講演では、e スポーツが協調性や自己管理力などの「社会的感情学習(SEL)」に効果があるというアメリカでの研究結果が紹介され、e スポーツの学業成績向上への貢献についても触れられました。
特に注目されたのは、e スポーツを用いて学業成績が上がった事例です。ある学校では、e スポーツを取り入れた結果、学生の年間成績が平均2.43から2.70に向上したという具体的な数字が示され、参加者たちに e スポーツの教育的価値を強く印象付けました。また、e スポーツを通じた異文化理解やグローバルなコミュニケーション能力の向上についても話され、オンライン上で海外のプレイヤーとゲームを通じてコミュニケーションを取ることで自然に英語力が向上する事例も紹介されました。茨城大学の入試の事例で『Farmcraft』というマインクラフトを活用した農業体験シミュレーションゲームで成果を上げた高校生が、茨城大学の総合型選抜で e スポーツの成果が評価されて合格に至ったケースについても触れられました。e スポーツスキルが学問的要素と結びついた良い事例となりました。
セッション2:「Z世代における e スポーツの人気とその未来」
- 江端 浩人 – iUeスポーツ株式会社 / i-University Professor, eスポーツプロジェクト リーダ
次に、iUe スポーツ株式会社の江端浩人氏が、Z世代における e スポーツの人気の背景について講演を行いました。Z世代がなぜ e スポーツに熱狂するのか、そしてその人気がどのように教育や社会に影響を与えるのかについて、江端氏は5つの仮説を挙げて分析しました。
1. e スポーツは「推し文化」とリンクしており、若者たちが自分の推し選手を応援するという新しい形態が生まれている。
2. e スポーツを通じてITスキルが向上する。
3. e スポーツがコミュニティ形成とコミュニケーション能力の向上を促す。
4. e スポーツを通じて社会的なつながりを得ることができる。
5. e スポーツを通じた自己認識やアイデンティティの確立が進む。
特に、夜中に親が子供を起こして e スポーツの試合を見るために参加させるという具体的なエピソードは、e スポーツが他のスポーツと同様に熱狂的なファンを持つことを象徴しています。
また、江端氏は e スポーツが新しいビジネスの手段としての可能性についても言及しました。プロゲーマーだけでなく、イベント運営や実況、マーケティングなど、さまざまなキャリアパスが生まれていることを強調し、e スポーツ産業の成長が新たな職業を創出する未来が描かれました。
パネルディスカッション:「 e スポーツと教育の未来」
ファシリテーター
- 江端 浩人 – iUeスポーツ株式会社 / i-University Professor, eスポーツプロジェクト リーダー
パネリスト
- 加藤 聖一 – 学校法人仙台育英学園 常務理事 / 仙台育英学園沖縄高校 校長
- 坪山 義明 – NASEF JAPAN eスポーツ・スカラスティック・ディレクター / NASEF US コミュニティーリーダー
最後に行われたトークセッションでは、「スポーツと e スポーツの違い」や「 e スポーツの社会的地位の確立」について議論を展開しました。従来のスポーツと e スポーツを比較しながら、e スポーツがいかにして教育や社会の中で重要な役割を果たし得るのかを多角的に検討しました。特に、e スポーツがもたらす新しい教育の可能性や、e スポーツを通じた人格形成の重要性について、建設的な提案が行われました。
加藤氏は、最初に仙台育英学園高校での e スポーツの活動内容について紹介しました。2018年ごろから、生徒の強い要望により e スポーツを部活動として導入する動きが始まり、2019年度に本格的に部としての活動をスタートしました。加えて、ここ最近では高校進学にあたって、中学生にとってはe スポーツを授業や部活動の中で学ぶことができるかどうか、保護者にとってはe スポーツに取り組むことでどのように学びやキャリアに結びつくのか、といった点も高い関心がもたれていると説明していました。
質疑応答セッション
セッション終了後には、参加者からの質問に答える質疑応答セッションが行われました。
Q1. e スポーツは本当に教育に役立つのですか?
坪山氏: 「はい、e スポーツは21世紀のスキルを育てるツールとして非常に有用です。e スポーツを通じて、協調性、自己管理能力、コミュニケーションスキルといった社会的感情学習(SEL)の要素が強化されます。米国では、e スポーツを取り入れた教育が学業成績の向上にも貢献しているという研究結果も出ています。」
Q2. Z世代にとって e スポーツが人気な理由は何ですか?
江端氏: 「Z世代は、e スポーツを新しい形の推し文化として捉えています。また、e スポーツを通じてITスキルを身につけたり、オンラインコミュニティで社会的つながりを築いたりできる点が、特にZ世代に響いています。彼らにとって、e スポーツはただの娯楽ではなく、自己表現や成長の手段でもあります。
イベントの総括
「ちょもろーウィークセッションズ Day 1」では、e スポーツが教育や社会にどのように寄与できるかが深く議論され、参加者たちに e スポーツの新しい可能性を示しました。e-sportsやゲームは「競技」であるという固定観念を越えて、「人格形成のツール」にする試みが進みました。教育ツールとしての e スポーツの活用が今後さらに進むことが期待されます。