2024.10.28イベント開催報告
【レポート】第6回 AI×コンテンツ研究会「AI×コンテンツ ビジネスマッチング」
CiP協議会ではAIの登場によって大きく変わりつつあるコンテンツの制作、流通、受容についての変化を共有し、日本から新たな利活用の事例を作り世界に打って出る機会を探るプロジェクト「AI×コンテンツ研究会」をスタートし、10/10に第6回として「AI×コンテンツ ビジネスマッチング」を開催しました。
■ 登壇者 *敬称略
〇AI関連ホットトピック
・花光宣尚氏(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 特任助教)
〇基調講演
・曾和小百合氏(経済産業省 商務・サービスグループ 文化創造産業課 課長補佐)
・腰田将也氏(経済産業省 商務・サービスグループ 文化創造産業課 課長補佐 / 弁護士)
・内山隆氏(青山学院大学総合文化政策学部総合文化政策学科 教授)
・菊池尚人(デジタル政策財団 理事)
〇AI×コンテンツ ビジネスマッチング
・松原冬樹氏(Arrowheads株式会社代表取締役)
「【世界初】感情認識AIを活用した、笑わないといいねが出来ない動画アプリ”BlitzMe”(ブリッツミー)」
https://arrowheads.co.jp/
・岡田侑貴氏(株式会社データグリッド代表取締役CEO)
「生成AIによる画像・映像ビジネスの実践事例について」
https://datagrid.co.jp/
・林範和氏(株式会社バルスCEO)
「AIを活用した映像制作の実例について」
https://balus.co/
・安田晴彦氏(株式会社シルバコンパス代表取締役)
「AI映像対話システムを用いたエンタテインメントサービスについて」
https://silvacompass.co.jp/
■ レポート
花光氏のAIホットトピックを皮切りに第一部基調講演として7月に経済産業省より公表された「コンテンツ制作のための生成AI利活用ガイドブック」についてその策定に携わった商務・サービスグループ文化創造産業課の曾和小百合氏、腰田将也氏より同ガイドブックの解説をいただき、それを踏まえて内山隆青山学院大学教授、菊池尚人CiP協議会専務理事を加えたディスカッションが行われた。第二部では4社のスタートアップが登壇し、自社のAIを活用したサービスについて紹介があり、懇親会を通じて参加者と意見交換、商談を行った。
【AIホットトピック:花光氏】
昨今の動きとして下記のトピックが挙げられました。
・ 今年最も大きな話題になるのが、ノーベル物理学賞にAIに関わる人(ジョン・ホップフィールド、ジェフリー・ヒントン)が選ばれたこと。
・ AIが社会に浸透していく中で、この会では言い続けてきたように次を考えるタイミング。『AI for the restof us』=「AIから誰も取り残さないこと」を先を見据えながら討論する場にすることが大切。
● Chain of Thought Prompting
・ OpenAIo1で提案されている「Chain of Thought Prompting」は問いに対する思考過程を学習する方法。
・ 得意分野が科学や数学やプログラミングであり、その結果IQ換算も「IQ120を超えたあたり」まで進んできた。
・ 「Chain of Thought」は、「OpenAI」だけではなく、クラウドに取り入れても精度が上がる。
● Runway Gen3
・ Gen2と比べより高品質な動画生成、複雑なシーンの変更、アートディレクション機能など、さまざまな改良が加えられた動画生成AIモデル。
● 技術による「置き換え」とイノベーション
・ 10/12-13行われる「ちょもろー2024(ちょっと先のおもしろい未来)」では、未来の職業体験としてAIアーティストというものをイベントでやる。
・ 『初音ミク』も20年前は、コンピュータミュージックに関わる人の中でも変わった人が使う程度だったが、いまは「ボカロP」や「ボカロ曲を人が歌う」文化からは世界的なアーティストが世界各地から登場している。
・ だから、AIをいま、子どもに経験させてみる。「子どもの書いた絵をDiscordを使って加工して動画にする喜び」といったものを体験させることで、AIとともに育つことができる。
・ 一方で、生成AIが作った「何となく懐かしい生成AI楽曲」がたくさん作られ聞かれている。ストリーミングやYouTubeに聞き方が変わってきた中で、「誰の曲かわからないけどいいよね」という聞き方をしている。こうした中から、その派生で「あの時聞いたAIの曲がいいんだよね」という人たちが生まれ、「さらに次の音楽文化」を作っていくのでは、と思う。
● Physical AI
・ 8月のシーグラフでNVIDIAのジェンセン・ファンCEOがキーノートで「NVIDIAの未来」について話をしていた。
・ NVIDIAはオムニバース(シミュレーション・プラットフォーム)、3DCGを使う技術、フィジカルAI=ロボットまで3つを連携して、どこにでもNVIDIA入り込むことを狙っている。
・ 現在の「生成AIとの対話」から、徐々に「移動体」や「ロボット」に少しずつ入り込み、あらゆるところに生成AIが入り込んでいくことになるだろう。
● まとめ
1. ただただ、新しく、賢くなった、推論エンジンを持った精度の高いAIが登場してくる。モデルの戦いだけ絵はなく、活用方法にブレイクスルーが出始めている。
2. コンテンツ生成技術だけではなく、使う人の生活視点も考えることで新たな活動シーンが生まれてきそう。
【第一部:コンテンツ制作のための生成AI利活用ガイドブックとその利活用について】
※「コンテンツ制作のための生成AI利活用ガイドブック」該当ページを参照しつつのプレゼンテーション
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/contents/ai_guidebook_set.pdf
・ 今回のガイドブックは、「コンテンツ産業における先端的技術活用に関する調査 事業報告書」とともに公表している。事業報告書はトレンドやユースケース中心にまとめているが、ガイドブックは法的な留意点・対応策に重点を置いて作成した。
・ 昨年来、コンテンツ制作にも生成AIが大きなインパクトを持つことから、大企業からは「社内でどのようなリスク判断をするかというとき国での整理がないので判断が難しい」という話があった。業界でも「ユースケースが横に展開されず、使い方がわからない」という話もあった。
・ そこで、「コンテンツ制作における生成AI利活用のユースケース」「各活用シーンごとの法的留意点」「留意点に対する対応策」の3点について、クリエータや法律の専門家も交えながら討議し、まとめてきた。生成AIは「積極的に利活用しましょう」ということだけではなく、「うまく共生していく」ことが大事で、「コンテンツを作る中心は人である」という視点から作成している。
・ 法的な留意点・対応策は、関係省庁が示した考え方に基づき、それらの内容を、コンテンツ制作に携わる産業界の皆様にわかりやすくお伝えすることを目的としている。
● 生成AIの利活用ケース
・ 制作の効率化やバックエンド業務等を含めて、幅広いシーン・用途における生成AIの利活用が想定される。
・ゲームにおいては、 活用の方向性として “開発の効率化”、“小規模リソースでの開発促進”、ユーザー体験の向上” 等に向けた活用が想定される。
・ P9のAI Frog Interactiveの事例は生成AIを利活用し少人数での開発が実施している事例。
・ P10のモリカトロン「Red Ram」はコンテンツのすべてをAIが生成するという事例。
・ P11のSQUARE ENIXの「THE PORTPIA SERIAL MURDER CASE」はユーザーの体験を拡張するような事例。
・ アニメにおいては、活用の方向性として”制作の効率化” と “流通・2次利用促進” といった方向性が想定される。
・ P12の 「AI✕アニメプロジェクト」のように小規模スタジオにおいてこれまでにない形で生成AIによりアニメが作れないか探求しているところもある。
・ P14のDLEの「AI吉田くん」も、音声合成技術を交え「吉田くん」のユニークな声と口調を再現 し、アニメキャラクターIPの2次利用の促進等を図っている。
・ 広告産業については “制作効率化” “マーケティング最適化” “クリエイティブへの活用” “マネージドサービス強化”等様々なユースケースが見られる。
・ P15はサイバーエージェントの広告クリエイティブ制作支援、事前予測支援のツールの事例となる。
・ P16以降は、広告においてクリエイティブにいかに生成AIを活用したかといった事例を紹介。
● 生成AIの活用シーンごとの留意点・対応策
・ 留意点・対応策は、本年3月~5月にかけて文化庁や内閣府が示した考え方に基づき、生成AIの各活用シーンにおける留意点・対応策を、コンテンツ制作に携わる産業界の皆様に向けてわかりやすくお伝えすることを目的としている。
・ P25~27ページ目では、ゲーム、アニメ、広告のそれぞれの制作フローを念頭におき、生成AIの活用シーンを紹介するとともに、各活用シーンごとに、著作権、意匠権・商標権、肖像権・パブリシティ権に留意すべきことを、2種類のアイコンを用いて、程度に応じてお示ししている。活用シーンについているⓐⓑⓒ……のアルファベットは、その後の留意点・対応策の解説の右側のインデックス表示と対応しており、該当ページを参照しやすいように工夫している。
・ 著作物の利用について。開発・学習段階において、他人が著作権を有する著作物を利用する場合は、著作権者の許諾がなければ本来は著作権侵害にあたる可能性があるが、著作権法30条の4に基づき、情報解析のためなど非享受目的の利用行為であれば、原則として著作権者の許諾なく利用することができる。
・ ここでいう「享受」とは、『著作物の視聴等を通じて、視聴者等の知的・精神的欲求を満たすという効用を得ること』をいう。
・ 一方、非享受目的と併存して、享受目的があると評価される場合は、30条の4本文の要件を満たさないし、また、「著作権者の利益を不当に害することになる場合』にも、例外(同条ただし書)として30条の4は適用されないことになる。により、
・ 対応策としては、大きく分けると2つの方向がある。ひとつは30条の4の要件を満たすため、非享受目的のみで利用したり、「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」に該当するような利用を避けること。もうひとつは、30条の4の枠外で、学習用データとして、自分が著作権を有しているデータや利用の許諾を得たデータを利用することなどが考えられる。
・ 生成・利用段階においては、AI生成物による既存の著作物の著作権侵害が問題となり得るが、いわゆる類似性や依拠性の判断方法は、従来と基本的に変わらない。AI生成物を利用する際に、類似性を確認することは必須であるが、「どのような生成AIを利用するか」「プロンプトの入力方法」など、著作権侵害をできるだけ避けるための対応策も様々ある。
・ また、制作フローに対応する形で、具体的な生成AIの活用シーンごとの留意点や対応策についても紹介している。
・ 人の肖像の利用の場面では肖像権、著名人など顧客吸引力を有する人の肖像や声の利用の場面では、パブリシティ権の侵害可能性に留意すべきである。基本的には、判例が示した判断基準や考慮要素に基づいて判断することになるが、著作物の利用の場面と同様、権利侵害をできるだけ避けるための対応策も様々存在する。
● さいごに
・ 時間の関係上、著作権、肖像権・パブリシティ権に限った説明となったが、本ガイドブックをぜひご活用いただきたい。
・ 本ガイドブックは、今回の公表をもって終わりという性質のものではない。国内外の生成AIの利活用状況、法制度に関する議論、紛争などの様々な状況を踏まえながら、本ガイドブックの更新も含めて、施策を検討してまいりたい。
これより内山隆青山学院大学教授、菊池尚人CiP協議会専務理事を加えて、本ガイドブックとりまとめのエピソードやリリース後の反響、今後のアップデートなどについてディスカッションが行われた。
【第二部】
■ 松原冬樹氏(Arrowheads株式会社代表取締役)
・ 笑わないといいねが出来ない動画アプリ”BlitzMe”ヒューマン・コンピュテーションとクラウドソーシングに関する主要国祭会議AAAI HCOMP2024にてBest Demonstration Awardを受賞)のご紹介。
・ 「いいね」ボタンの代わりに、インカメラとエッジAIで感情を定量化し、「わらったら『いいね』がつく」シンプルなソリューション。
・ 笑顔数を定量化できるところもゲーミフィケーションにしやすい。
・ インカメとエッジAIを使った笑顔定量化だが、「笑顔スコア」を独自に算出。人間と機械の協調といったところにつながるデータになるので、そうした蓄積されたものを行列分解などを使うと笑いのツボや嗜好が分析できる。また、このサイトの「誰がどのコンテンツを見てどの程度笑ったか」というデータを活用して、ユーザーひとりひとりを笑わせることに最適化したレコメンデーションができる。
■ 岡田侑貴氏(株式会社データグリッド代表取締役CEO)
・ 生成AIによる画像・映像ビジネスの実践事例についてのご紹介。
・ 2021年にパワーポイントの資料と原稿をアップロードすると、アナウンサー的にエージェントになる人が読んでいくコンテンツを自動で作れるバーチャルヒューマンを作った。
・ 最近は金融機関の新製品について社内で営業にレクをするコンテンツを毎週のように作ることが必要だし、社員が話をしていると退職後に使いにくいという点でも評価されている。
・ 肖像権の関係で、アパレルや、SNSに投稿される画像も作っている。AIが作った頭部に差し替えている。肌の色も変えられるので、そうした広告画像も作っている。
・ eコマースでも、商品をスタジオ撮影はお金がかかるので、撮った写真を自動的にバックと合成するといったこともできている。
・ 経産省の「GENIAC」という「生成AI基盤モデル開発の支援」の開発事業に採択されたので、来年には「動画系の生成AIの基盤ンモデル」も開発して公開できればと思っている。
■ 林範和氏(株式会社バルスCEO)
・ AIを活用した映像制作の実例についてのご紹介
※当日参加者のみの情報提供
■ 安田晴彦氏(株式会社シルバコンパス代表取締役)
・ AI映像対話システムを用いたエンタテインメントサービスについてのご紹介。
・ AIの基盤を作る会社ではなく、すでにあるAIをツールとしてシステムインテグレーションし映像を作っている。
・アイドルと対話ができるなど「感情が動く、映像サービス」。『会話を楽しくする要素の8割が視覚情報である』ということから、そうしたものを対人業務支援に使っていく。
・ バーチャルヒューマンの対話サービスは増えてきているものの、まだ、あまり使われない。「不気味」だったり「対話のテンポが合わなかったり」する。その部分で違和感を感じないようにすること、話したい相手を作ることを考えている。
・ 導入事例としては文京区の公共施設案内、博物館の子供向け教育コンテンツ、自動運転車用アバター、小林幸子さんをモデルに起用した高齢者の脳の活性化をサポートするサービス(2024年12月より販売)など。
【懇親会】
登壇スタートアップのプレゼンテーションを踏まえ、各社ごとにブースに分かれ軽食をつまみながらの情報交換、商談を実施しました。